こんにちわ。じまろーです。
2018年、世界で1700万人が、がんと診断されて、そのうち1000万人近くが診断されたとおりのがんが原因で命を落としています。
世界中の研究者が、がんを治すために格闘していて、将来の希望もあります。
そんな中で、こちらの本を読ませてもらって、がんとの向き合い方、がん予防についても心の持ち方など、大変参考になりましたので紹介させていただきます。
ヒトはなぜ「がん」になるのか 進化が生んだ怪物(2021年)
キャット・アーニー著
この本は、下のような思いをお持ちの方におすすめです。
こんな方におすすめ
- なぜ、がんになるのか知りたい
- 必要以上にがんを恐れています。
- がんという病気のことを知って、今後もしがんになったときに役立てたい。
なぜがんになるのか?
がんといえば、今の直生活などが原因の現代病というイメージがないでしょうか?
がんは、現代病ではありません。古代のミイラからも腫瘍が発見されており、昔はがんの発生確率のあがる高齢者になるまで長生きすること自体が少なかったことも考えると、昔から存在した病なのです。
また、ヒトだけががんになる確率が高いということもありません。あらゆる生き物でがんは確認されています。
ヒトのがんの90%は50歳以降に出現しますが、それはヒトが人生の最盛期を健康に過ごし、出産と子育てが終わったら、不健康になってもいいように進化してきたためと言われています。
健康体にも遺伝子の変異はある
がんとは、簡単にいうと遺伝子の変異が引き起こす病気です。
ここで、ある実験を紹介します。
健康体の人のまぶた(形成外科で取ったもの)から、どれだけの変異があるか調査したところ、何千個もの変異が見つかった。完全にがん化した腫瘍細胞に見つかるのとほぼ同数の変異を抱えるものもあった。
一見すると、完全に正常な皮膚細胞であっても、実は変異した細胞集団がいくつもあり、パッチワークのように入り乱れていた。
つまり、健康体の身体にも遺伝子変異は数多く含まれているということです。遺伝子変異は細胞分裂の数に比例して多くなります。つまり、一番変異する可能性があるのは成長期なのです。70歳時点で保有する変異の半分は、18歳の時までに得てしまっているそうです。
こうした変異細胞集団のどれが最終的にがんに育つかは分かりません。少なくとも、正常な組織には、あなたが想像する以上に危険な変異が含まれているということです。
そして、危険な変異があるからといって、がんになるわけでもありません。
がんは完全には防げない
では、なぜがんになるのか?
典型的なヒトの身体は30兆個を超える細胞で出来ており、一生のうちに数えきれないほど増殖している。30兆個のどの細胞もがん化する可能性がありますが、実質的にはほぼゼロです。
健康な細胞ががん化する確率をナンバーズゲームに例えると、くじに当たって賞金を得られる確率は100兆分の1、つまり銀河系1000個の中になる星ひとつを当てるようなもの。
ただし、下のようなことで、大当たりする確率が上がります。
- 発がん性物質に触れる
- 放射線を浴びる
- 喫煙
- 加齢
- 炎症
しかし、上のようなことを完全に避けても、がんになることを完全に防ぐことはできません。
がんというものを著者はこう述べています。
ガンとは
がんは、生命システムそのものに備わったバグであり、避けようとしても避けられるものではない。DNA解析によって、私たちの体は正常細胞もがん細胞も変異だらけだと分かった。そうした変異の多くは悪さをしないことも分かった。
したがって、何ががんを引き起こしたかを知るのは不可能。私たちの体は一定期間(人生の最盛期)がんを抑制するように進化してきた。だがある時点になると、裏切り者がルールをかいくぐるようになり、がんを発病するのだ。
不治の病となるのは転移のせい
侵襲性の主要1gには、10億のがん細胞がいて、血液中に流れ出しています。しかし、それでも2次性のがんになる確率は低いとのことで、10億分の1の確率だそうです。
それは、統制のとれた健全な組織は、不完全ながん細胞を抑えつけておくことができるためです。これは、マウスの実験で確認されていて、がん細胞を正常細胞に入れると、がん細胞は小さくなり、それを取り出すと、また拡大を続けたというのです。
逆を言うと、炎症やダメージを受けたり、老化した組織は、放浪しているがん細胞を引き付けたり、休眠していた腫瘍を目覚めさせてしまいます。
ここから、健全な組織の維持することには、意味があります。
例えば、炎症対策や老化対策、免疫力の強化などです。具体的には、腸内環境の改善や、睡眠、カロリー制限など、よく知られた方法になります。
がんスクリーニングの意味
がんのスクリーニングに対する考えが興味深かったので紹介します。
がんのスクリーニング検査で命が救えるなら、もっと検査すべきだという声はよく聞くが、それは正しいのだろうか?もちろん真に命を救ってくれるスクリーニング検査ならいいのだが、がん化しないシコリを数多く見つけたところで、見かけ上の生存率向上にしかならない。
患者に不必要な治療とストレスを与えれば、結果的にそれが、微小環境(健全な組織)を乱すことになり、自然選択の圧をかけ、本物のがんの出現を許すことになるかもしれない。
自然選択の圧
生物種に存在する突然変異を選択して、一定の方向に進化させる現象。
抗がん剤や放射線治療で、大量のがん細胞が殺されると、最初は小細胞だった耐性をもつ細胞が、そのあとを埋めるように急速に拡大(再発)するようなこと。
(ギャング映画で、大物連中が殺し合いをして、全員いなくなったあと、コソコソしていたチンピラがのし上がるようなイメージ)
わたしも、人間ドッグで要再検査となったときの、再検査結果を聞く(結果問題なし)までのドキドキの日々は確実にストレスとなっていましたね。
がんとの向き合い方
まず、がんの考え方を変える必要性を説かれています。
がんは、身体という広い世界の中で、つねに進化し続ける複雑な生態系、適応と生き残りを求めて、あらゆる種類の多様化とイノベーションを繰り出す力を持つ生態系だと理解する必要がある。
そして、本書で提言されている、がんとの向き合い方(戦い方)は下のようなものです。
全部殺さず、少し残す
畑の害虫コナガの例
100年以上、畑農家を悩ますコナガという害虫がいます。農薬を使用しても、その農薬耐性をもったコナガが出てきて、いたちごっことなっていました。
しかし、農薬耐性をもったコナガは、前述のギャングの例でいうチンピラなので、食糧の奪い合いや繁殖にとっては不利なため、耐性を持たないコナガを少し残す戦略にしました。コナガ同士で戦わせて、ある程度は容認することで、畑は以前ほど食い荒らされることはなくなりました。
上の例は、がん細胞についても当てはまります。
マウスでの実験
がん化させたマウスに下の3つの治療法を行いました。
- 規則正しく抗がん剤を投与
- がんが大きくなったら抗がん剤を投与する適応療法
- 治療なし
その結果、規則正しい抗がん剤での治療は、がんが4倍に成長し、治療なしのマウスよりもがんが成長しましたが、適応療法では、がんのサイズは変わらずだったとのことです。
ついに、人でも臨床試験を実施されています。
臨床試験
前立腺がんの進行がんの11人(余命18か月で薬物治療したが再発した人たち)で、下のように治療を行いました。
抗がん剤投与 → がんが小さくなったら投与中止 → 開始前と同じサイズになったら投与を再開。
経過確認時、11人のうち10人ではがんは完全に安定(27か月)しており、一般的な薬物療法で予想される余命を1年伸ばしていた。
がん予防についての心の持ち方
どれだけ、ゲノムの変異を探して、それを生じさせた原因を避けても、予防の半分にしかなりません。もう半分は、老化などの自然現象でためていくもの。
そこで、下のような心の持ち方を提言されています。
細胞の健康と、その生息地(身体)の健康は、どちらも重要な要素です。
避けるべきモノやコトを列挙したリストとにらめっこしながら毎日をすごすより、もっと大きく構えて心身共にすこやかな暮らし、細胞社会の秩序をむやみに乱さない暮らしを目指すほうがいい。
慢性炎症をコントロールするよう努めるのもその1つだし、自分の体に備わった力を信じるのも1つ。私たちの体には不良細胞が不良行為をしようとしても、それを抑えることができる能力があるのだから、不良細胞の1つが網をすりぬけたくらいでオロオロすることはない。
必要以上に恐れないこと、そして、必要以上に健康への取り組みをおろそかにしないこと。
そういうことですね。
まとめ
いかがでしょうか?
わたしは、がんという病気への理解が進みました。
がんは、避けようとしても避けられるものではないという事実がある反面、がんになる確率を下げるために、できることがあるということも分かりました。
「心身の健康が、不良細胞をおとなしく抑えつけてくれる」ということを忘れずに生活していきたいですね。
本書で、まだまだ紹介できていない内容が多くあります。ぜひ、手に取って読んでみてください。