こんにちわ!じまろーです。
最近、私たちはずいぶん自分たちの健康を気遣っていると思いませんか。それは流行ともいうべきものでしょうか。
スポーツジムに行ったり、食べ物に気を付けたり、睡眠の質を上げるように努力したり自然の中での生活を求めたりする。このような予防医学の考え方が浸透してきていますよね。
ちょっと前までは、自分の健康を顧みずに仕事に明け暮れていたようなイメージがあったりしませんか。
それは、違います。
古代ギリシャ時代から、私たちはずーーーっと、健康というものに執着してきたのです。
過去の人たちは、今日の私たちと同じように、健やか、強く、またじょうずに年老いていくことを願っていたのです。さらに昨今、重要な健康因子としてとりあげられているもの(食べ物、睡眠、運動、精神など)は、すでに1800年以前の医学でもそう信じられていたものだったのです。
それを教えてくれるのが、下の本です。
老いと健康の文化史(2021年)
リナ・ノエフ著
この記事は、下のような人に向けて書いています。
こんな方におすすめ
- 昔の人は、健康に対してどのように考えていたの?
- 昔の人は、健康のためにどのようなことをしていたの?
古代の健康に関する考え方
本書では、古代から1800年頃までの西洋医学について語られています。そして、今日の健康医学の考え方には、2人の偉大な医師が影響しています。
ヒポクラテス
紀元前5世紀にエーゲ海のコス島に生まれたギリシャの医師で、それまでの呪術的医療と異なり、健康・病気を自然の現象と考え、科学に基づく医学の基礎を作ったことで「医学の祖」と称されている。 彼の弟子たちによって編纂された「ヒポクラテス全集」には当時の最高峰であるギリシャ医学の姿が書き残されている。
ガレノス
西暦129年頃~200年頃の、ローマ帝国時代のギリシャの医学者。臨床医としての経験と多くの解剖によって体系的な医学を確立し、古代における医学の集大成をなした。彼の学説はその後ルネサンスまでの1500年以上にわたり、ヨーロッパおよびイスラムの医学において支配的なものとなった
ガレノスの「医術」には下のように書かれています。
身体の中で変化する原因は「必要」なものと「不必要」なものとに分けられる。必要なものすべてをここに分類すると、1つは大気、次は身体の全体あるいは部分部分の動きと休息、3番目は睡眠と目覚め、4番目は食べるもの、5番目は外に出したりあるいは中に保持されるもの、6番目は精神に関わること。
これは、元をたどるとヒポクラテスの考えに行きつくのだそうで、私たちの健康の度合いを決める6つの因子が下のものとなるわけです。
- 大気、水、地
- 食べ物と飲み物
- 運動と休息
- 眠りと目覚め
- 保持と排泄
- 情緒バランス
現代の私たちが健康に対して取り組むのに重要視する因子と同じですよね。
それぞれ、どのように考えられていたか簡単に紹介します。
大気・水・地
最初の要素は、自分のいる土地についてです。
今のように、物流が発達していなくて、住むところも簡単に変えることができなかった時代に、住む土地の大気と水という環境要因が健康に大きな影響を与えると考えられていました。
ヒポクラテスはこのように書いています。
しからば、その調整要素たるものは、気象の変動、その土地の性情、飲み水の質である。一般論として、人々の肉体と習性は、その人の住まう土地の自然に左右される、ということなのである。
土壌について確かなことは、人についてもそうだ。気候の変化は、そこに住んでいる人々の性格にもみえてくる。気候が安定していれば、土地はおおむね平坦で、人々もまた平穏なものだ。
人それぞれが、自分の身体にあった環境というものが存在するということで、基本的には自分の生まれた土地となるのだと思います。
食べ物と飲み物
食べ物と飲み物は、健康に影響を与えるということは、古代から考えられていたというのは理解できます。
キリスト教を教えでは、「過食」は「7つの大罪」のひとつとされています。
こんな昔から、腹8分目が推奨されていたとは。それくらい、食べ過ぎないことが重要なことなんですね。
12~13世頃に作成されベストセラーとなった「サレルノ養生訓」の冒頭には架空の王にあてた願いで始まります。
ああ偉大なる王よ、不安に思うことなかれ、また怒ることなかれ、ワインを口にするのはほどほどにして、食べるのは控えて、でもたくさん食べてしまったら運動をして、でもぜったいに寝すぎるのはいけませぬ
運動と休息
古代ローマの風刺詩人ユウェナリスの有名ない一説
健全なる精神は、健全なる身体に宿る
があります。
そして16世紀の医師ジロラモ・メルキュリアーレの書物「肉体鍛錬の技術」では、肉体的なエクササイズが、病気を予防し、健康なライフスタイルを維持することを目的としたものであると書かれています。
その時代から、中程度の身体運動の健康効果は確信されており、過度なトレーニングは危険を伴うものと解釈されていたそうです。
眠りと目覚め
そして、睡眠の重要さについても昔の時代から、同じように考えられていました。
11世紀のアラビアの医師イブン・スィーナーが書いた「医学大全」にはこう書かれおり、当時から睡眠が重要視されていたことが分かります。
- 夜間のいい睡眠(熟睡)は身体が十分な生気、温熱を保持し、情緒にバランスを与え、心をリラックスさせる。
また15世紀の「健康全書」には、不眠に対する対策も紹介されていて、睡眠を重要視されていたことが分かります。
- 適度な飲食習慣に少しの運動
- 比較的弱めの睡眠薬についてのアドバイスもあり、砂糖を溶かしたぬるめのミルクが良い
- バラ水の香り
- ベッドシーツに新鮮な木の葉を散らし、耳に心地よい音を添えて落ち着かせる
- 寝具や寝間着にどのようなものが良いかまで記載されている
保持と排泄
古い時代から医師たちは、人間の身体と言うものは決して凝り固まったものではなく、何かと漏れ出しやすい管のようなものだと認識していたとのことです。
汗をかき、つばを吐く、尿や便を出す、月経や射精、母乳もでる。このような必要なものを保持して不必要なものを排泄することが、人間の健康な身体を維持する上で不可避の部分であるとされてきたのです。
特に尿や糞便は、長く体内に保持するべきではなく、規則的に排泄されてなければならない。そしてそれがいったん外へでてくれば、体内で起こっていることの情報を与えてくれるのです。昔の医師は、自分で尿の色と匂いと味をみて、診断を下したとのこと。
情緒バランス
古代から、感情や精神状態も健康に直結していたと考えられていたというのは興味深いです。
怒り、欲望、悲しみ、恐れ、驚き、軽蔑、嫌悪、絶望、これらの情動はすべて、時として身体的な病気の根源に関わるものとして考えられてきたのです。また同時に情動に関係する症状は、時にその肉体の方に原因があると理解されてきました。
心と身体の関係の理解については、時代とともに大きな変貌がありはしたが、診断法や治療法が時代の認識とともに変化しても、情動のバランスをどうやって維持するか、それを考えようとすること自体は世紀を超えてずっと一貫してきました。
今でもマインドフルネスなどが流行しているのも、古代からのこの流れに沿っているものなのですね。
まとめ
いかがでしょうか?
今は、スマホや電気など、当時と私たちを取り巻く環境は大きく変わっているように感じますが、健康を維持するために重要な要素は何も変わっていないのです。
私たちは日々取り組んでいることは、古代時代から変わらず考えられてきた永遠の課題なんですね。
古代から考えられてきた6つの健康を維持するための因子は下のものです。
- 大気、水、地
- 食べ物と飲み物
- 運動と休息
- 眠りと目覚め
- 保持と排泄
- 情緒バランス
基本的なことであるほど重要であることは理解できるが、基本的であるがゆえに軽く考えてしまう面もあります。
本書の内容から、やはり上の健康因子は軽く扱ってはいけないなと改めて認識し、行動に移していきたいと思っています。
本書では、紹介された本や博物館に展示されているような絵が多く、載せられていて、当時の健康に関してよりリアルに感じることができます。興味がある方は下の本をどうぞ読んでみてください。