こんにちは!じまろーです。
ネットで「トマト缶が危険」なんて記事に出合うことがあります。
それは、トマト缶の内側に塗られたコーティング剤にビスフェノールA(BPA)という内分泌かく乱化学物資(いわゆる環境ホルモン)のひとつである化学物質が含まれていて、それが溶出することで、ヒトの体内に入るというのです。
いろいろググってみてもいろんな意見があるので、ここは、下記の信頼できるところからの情報をまとめて、自分なりに安全かどうか確認してみました。
- 日本の動向:厚生労働省
- ヨーロッパの動向:EFSA(欧州食品安全機関)
- 日本生活協同連合会(生協)
それぞれの対応がどうようなものなのかまとめます。
1.日本の動向:厚生労働省
厚生労働省のビスフェノールAに関するQ&Aのページがあり、こちらで日本のビスフェノールAに関する対応が記載されています。少し古い(平成22年1月15日更新)のですが、厚生労働省のサイトで更新されずにありましたので、現状も下記の状況から進展ないものをと思われます。
主な内容は下のようなものです。
ビスフェノールAという化学物質は一部の食品用の容器等の原料に使用されています。飲食物に移行したビスフェノールAによる健康への悪影響を防止するために、これまでの各種の毒性試験に基づいてヒトに毒性が現れないと考えられた量を基に、ポリカーボネート製容器等について、2.5ppm以下という溶出試験規格を設けています。また関係事業者においても、ビスフェノールAの溶出をさらに低減させるための製品改良が進んでいます。
一方、ビスフェノールAについては、近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い用量の投与により影響が認められたことが報告されたことから、妊娠されている方(これらの方の胎児)や乳幼児がこの物質を摂取すると影響があるのではないかという懸念が持たれています。欧米諸国でも、このような報告から、ヒトの健康に影響があるかどうか評価が行われているところです。
厚生労働省食品安全部基準審査課 ビスフェノールに関するQ&A
・日本の規制内容
上記のQ&Aの中にも詳細記載されていますが、日本の規制をまとめると、
- 動物を用いての、様々な毒性試験が実施されており、その結果から無毒性量が求められている。
その無毒性量を基に種差や個体差などに起因する不確実性も考慮し、安全側に立って、ヒトに対する耐容一日摂取量が1993年(平成5年)に、50μg/kg体重/日と設定されている。 - それに基づいて、我が国の食品衛生法の規格基準においては、ポリカーボネート製器具及び容器・包装からのビスフェノールAの溶出試験規格※を2.5μg/ml(2.5ppm)以下と制限している。
となります。
つまり、体重50kgの人であれば、1日の摂取量が2.5mgとなります。(50kg × 50μg/kg体重/日)
これに対して、トマト缶(400g缶)で考えると、400g≒400mlとして、トマト缶からの溶出量は、1mg以下(400ml × 2.5μg/ml)となるため、安全率は2.5倍あります。
日本の規制から見ると、1日トマト缶ひと缶なら、十分摂取量は低い量となると言えます。
・それでは、なぜ危険と言われるのか?
試験研究の中で、動物の胎児や子供が、従来の毒性試験により有害な影響がないとされた量に比べて、極めて低用量(2.4~10μg/kg体重)のビスフェノールAの曝露を受けると、神経や行動、乳腺や前立腺への影響、思春期早発等が認められているという報告がされた。
また、日本でも、ビスフェノールAを妊娠動物に経口摂取させると、これまでの報告よりもさらに低い用量(0.5μg/kg体重)から当該動物の子供に性周期異常等の遅発性影響がみられたことが報告されている
厚生労働省食品安全部基準審査課 ビスフェノールに関するQ&A
とあります。
それを受けて、現在、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼中とのことです。。
体重5kgの幼児にあてはめてみると、2.5μg/kgの摂取(5kg × 0.5μg/kg体重)で影響が出る可能性があると言えます。
トマト缶をひと缶の40分の1の量の10g(10ml)を食べたとすると、25μgのビスフェノールA(溶出試験規格ぎりぎりと仮定して、10ml × 2.5μg/ml)を摂取する計算となり、動物実験にて影響の出た量を超えることになりますね。計算間違ってないですよね?
この状況が、子を持つ人たちの不安を高めているのだと思われます。
そして、このQ&Aには、妊婦の方へは「念のため、公衆衛生的な観点から、できるだけ(ビスフェノールAに)曝露しないように食生活に心がけて下さい」と記載されています。
なお、”胎児や乳幼児以外への影響については、動物実験ではそのような低用量での影響が現れるという報告はなく、またそのような影響は胎児や乳児以外では、生体の恒常性維持機構が発達していることから発現しにくいと考えられていることから、現行の規格値(2.5ppm)と同じ程度のビスフェノールAの溶出があったとしても、成人への影響はないものと考えられます
厚生労働省食品安全部基準審査課 ビスフェノールに関するQ&A
とのことです。
2.ヨーロッパの動向:EFSA(欧州食品安全機関)
ヨーロッパの対応は下のとおりです。こちらの内容はEFSAの2017年レポートの内容から抜粋しています。
厚生労働省の情報よりは、かなり新しい情報となっています。
Q:EFSAが特定したビスフェノールAの健康への影響は何ですか?
A:動物実験に基づくと、高用量のビスフェノールA(耐容一日摂取量の数百倍)は腎臓と肝臓に悪影響を与える可能性があります。
生殖、神経、免疫、代謝、心臓血管系、および癌の発症に対するBPAの考えられる影響は、現時点ではありそうにないと考えられていますが、除外することはできませんでした。
https://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/bisphenol
Q:これは、ビスフェノールAが人間に健康上のリスクをもたらすことを意味しますか?
A:現在の曝露量は害を引き起こすには低すぎるため、ビスフェノールAは消費者に健康上のリスクをもたらしません。
EFSAの調査で、すべての年齢の消費者が曝露されているビスフェノールAのレベルが、安全な曝露量の推定レベルをはるかに下回っていることを示しています。
https://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/bisphenol
つまり、普通に暮らしている分には、ビスフェノールを大量に摂取(曝露)することはないから気にしなくていいよ。と言っているわけです。
またEFSAは、2015年に耐容一日摂取量を、50 μg/kg体重/日 ⇒ 4 μg/kg体重/日に削減しています。これについては、下のように回答しています。
Q:EFSAが耐容一日摂取量(TDI)を削減したのはなぜですか?
A:TDIの削減は、ビスフェノールAに関する新たな健康問題の出現とは関係ありません。ビスフェノールAからのリスクを評価するために使用される方法が、2006年から2011年の間に当局によって実施された評価で使用される方法よりも洗練されたため、EFSAはTDIを大幅に削減しました。より正確なデータが利用可能になり、リスク評価で使用される計算が利用可能になりました。
https://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/bisphenol
これは「危険だから、耐容一日摂取量を減らしたわけではないよ」とって言っているわけですね。
ヨーロッパでは、引き続き調査は続けられているものの、概ね普通の生活では問題となるレベルではないと判断しています。
3.日本生活協同連合会(生協)
生協さんも独自のサイトで、ビスフェノールA問題についてのQ&Aを紹介されており、溶出量も測定されていて大変有用です。
生協さんで取り扱っている海外製造の缶詰でのビスフェノールAの溶出量
- フルーツ缶詰め類 検出せず
- マッシュルーム缶類 0.007~0.009ppm
- トマト類 0.023~0.029ppm
- ミートソース0.013~0.025ppm
- ツナ缶類0.036~0.051ppm
これより、ビスフェノールAの溶出試験規格の2.5μg/ml(2.5ppm)を大きく下回っていることが分かりますね。
例えば、トマト類で一番多い量である0.025ppmであると、溶出試験規格の100分の1の量です。
トマト缶をひと缶の40分の1の量の10g(10ml)を食べたとすると、0.25μgのビスフェノールAを摂取する計算となり、動物実験で影響の出た量よりも少なくなります。
まとめ
ここまで見てきて、成人の人に対しては、必要以上に心配することはない数値なのではないでしょうか?
私個人的には、気を付ける点は下の3点です。
- どこから来たか分からない缶詰の購入は控え、ある程度信頼性のあるメーカーのものを購入する。
- 缶詰は保存がきくが、かなり古いものは使用を控える。
- 缶詰をそのまま火にかけて食べるようなこともできるだけ控える。
- 小さいお子さんをお持ちの方や、妊婦の方は、念のため気を付ける。
ということだと思います。
トマト缶では、ビスフェノールフリーのものもありますので、気にされる方はこのようなものを選ぶようにしてみてはいかがでしょうか?
それほど高いってわけではないので、私もよく買わせてもらっています。